みなさん、こんにちは。ISID CIT事業部の石際です。
コンタクトセンターのクラウド化が進んでいますが、Salesforce Service Cloud(以下「Service Cloud」)のような顧客管理(CRM)アプリケーションと連携することでのカスタマーエクスペリエンス(CX)の向上も重要視されています。
Service CloudでCTI(Computer Telephony Integration)機能を具備したコンタクトセンターを構築する場合、Salesforceが提供しているOpen CTIというライブラリを利用して各テレフォニーベンダーが作成したCTIとService Cloudを連携することで実現できます。
コールセンター構築と聞くと複雑で構築に時間が掛かる印象ですが、Twilioが提供しているクラウド型コンタクトセンターのTwilio Flexであればクイックスタートが可能です。
今回はService CloudにTwilio Flexを連携させることで、CTI機能を具備したコンタクトセンターを構築してみました。
1. Twilio Flexとは
Twilioは、電話やSMS・ビデオ・チャット・SNSなど世の中にある様々なコミュニケーションチャネルをWeb・モバイルアプリケーションとつなぐクラウドコミュニケーションAPIサービスです。そのTwilioの各種サービスを組み合わせたプログラマブルなクラウド型コンタクトセンタープラットフォームがTwilio Flexになります。マルチチャンネルに対応し、オペレータの画面のUIはもちろんIVR1やACD2などのフルカスタマイズが可能となっています。
2. Service CloudとTwilio Flexを連携してみる
今回は Integrate Twilio Flex with Salesforce を参考に設定を行いました。
Service Cloudに電話を連携する場合、一番メジャーなのはAmazon Connect CTI Adapterだと思います。Amazon ConnectはSalesforceのAppExchangeからパッケージのインストールが必要です。
一方で、Twilio Flexとの連携ではパッケージのインストールが不要です。Twilio Flexの設定とTwilioで用意されているコールセンター定義ファイルをSalesforceにインポートしSalesforceの設定を行うだけで完了します。10分程度あれば完了してしまうという驚きの簡単さです。
では、さっそくセットアップをしてみましょう。
(事前にTwilioで電話番号を取得しておきます。電話番号の取得方法はTwilioコンソールから電話番号を購入する方法を参考にしてください。)
2-1. セットアップ
Twilio Flexの設定
まずは、Twilio Flexの設定を行います。
Flex管理画面から [INTEGRATIONS] をクリックしCRM連携設定の画面に遷移します。
CRM連携設定の画面で [Salesforce] を選択し、Salesforce連携の設定を行っていきます。
1. 設定を有効にする
[STATUS] のセクションでトグルを [Enabled] にして、連携の設定を有効化します。 (こちらは公式ドキュメントに書いていないのでご注意ください)
2. パラメータを設定する
[CONFIGURATION] のセクションで下記の項目を設定します。
- Workflow SID(任意):エージェントのルーティングルール(Workflow)を指定します。デフォルトの場合は空欄にしておきます。
- Task Channel SID(任意):音声チャネルとは異なるチャネルを使用したい場合にチャネルを指定します。
- Agent Caller ID(必須):SalesforceからClick to Dialで発信するために使用する発信者IDを指定します。(上記の画像ではこの項目が表示されていませんが、初回の設定でのみ項目が表示されます。設定後はTwilioコンソールの [Flex] > [Manage] > [Voice] 画面の [Flex Dialpad] にて設定が可能です)
- Salesforce Base URL(必須):Salesforceドメインを登録します。(初回の設定後はTwilioコンソールの [Flex Settings] 画面で設定を行います)
- SSO:SalesforceがIdPとしてSSOの設定が可能です。(今回は設定していませんが、利用する際は Configure Salesforce SSO With Twilio Flex などを参照して必要な設定を行ってください)
- LOG:ログをSalesforceに記録したい場合はチェックを付けます。
それぞれの項目は設定後変更が可能です。
3. コールセンター定義ファイルをダウンロードする
最後に [FILES] のセクションの [DOWNLOAD] からコールセンター定義ファイルをダウンロードします。
Salesforceの設定
次にSalesforceの [Setup] にて設定を行います。
1. コールセンター定義ファイルをインポートする
[Call Centers] の設定画面から [import] ボタンをクリックし、Twilio Flexからダウンロードしたコールセンター定義ファイルをインポートします。
インポート後、[Call Center Users] のセクションにある [Manage Call Center Users] ボタンをクリックし、ユーザーを追加します。
2. 着信時のアクションを設定する
[Softphone Layouts] の設定画面から着信時の挙動を必要に応じて設定します。
3. ソフトフォンを追加する
[App Manager] の設定画面からTwilio Flexを表示させたいアプリを選択します。今回は [Service Console] にTwilio Flexのソフトフォンを追加します。
[App Settings] から [Utility Items] を選択します。
[Utility Items] のリストに [Open CTI Softphone] を追加し、下記の内容で項目を設定します。
はい、これで完了です!すべてGUIベースでクイックに連携ができました。
Service Consoleを見てみると、Twilio Flexのソフトフォンが表示されるようになっています。
2-2. 連携すると何ができるか
さて、Service CloudとTwilio Flexを連携することで何ができるでしょうか。
着信時の動作を確認してみる
Twilio FlexはコールフローをStudioで設定できます。動作確認では着信があるとすぐにオペレーターにつなぐフローを使用します。
早速、Twilioで取得した電話番号に電話をしてみます。
1. 着信がポップアップする
まず、着信があるとFlexのソフトフォンをポップアップします。
2. 着信を受けると顧客情報ページを表示する/新規登録ページを表示する
着信している電話番号をクリックすると電話番号からオブジェクトを検索し、画面に表示します。
電話番号がヒットしない場合は、新規登録ページが表示されます。この時、電話番号がフィルされます。
3. タスクにログを記録する
Twilio FlexのSalesforce Integrationの設定でログを有効にした場合は、タスクにログが記録されます。
このように、デフォルトの設定で必要最低限の機能が実装されています。
カスタマイズが必要な場合はTwilio StudioやSalesforceの開発が必要になってきます。
3. 簡単なコールフローを作ってみました
Studioを使って少しコールセンターっぽいコールフローを作ってみました。
フローの流れは上記のようになります。"sfdcSearchString": "{{widgets.getInput.Digits}}"
をセットすることで、グローバル検索に値を渡すことができます。
オペレータが見ているSalesforceの画面では、
- 会員番号がある顧客は会員番号でグローバル検索される
- 会員番号がない顧客は電話番号で検索され、なければ新規登録画面が表示される
という動きになります。
このように、Studioをカスタマイズすることでオペレータにとっては効率的な、顧客にとっては便利で親切なコンタクトセンターの構築が可能です。
4. 感想
想像以上に簡単にService Cloudとの連携ができました!Amazon Connect CTI Adapterを使った連携よりもシンプルな構成のためクイックにスタートできる点が良いところだと感じました。
また、Twilio Flexを利用するメリットとしては、
- 対応チャネルが豊富
- APIや開発用のライブラリなどが充実
- コンタクトセンターの総合的な改善が可能
などが挙げられます。
機能の拡張性も優れているため、クイックにはじめた後、業務に応じて開発を柔軟に行っていくことも可能です。Service Cloudでコンタクトセンターを構築する際、Amazon ConnectだけでなくTwilio Flexも検討してみてはいかがでしょうか? 最後までお読みいただきありがとうございました。
執筆:@ishigiwa.yumi、レビュー:@higa (Shodoで執筆されました)
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IVR (Interactive Voice Response) 自動音声応答:コールセンターなど企業の電話窓口で、音声による自動応答を行うコンピューターシステム。発信者のダイヤル操作に合わせて、あらかじめ録音してある音声を発信者側に自動的に再生する。音声認識機能を備え、相手の発話に応じて再生内容を決める製品もある。↩
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ACD (Automatic Call Distribution) 自動着信呼分配機能:着信したコールを自動的に管理、コントロールする装置。次々に入る着信コールを、その時点で空いている、あるいは次の応答を最も長時間待っている適切なスキルを持ったテレコミュニケーターから順次均等に配分できる機能を備える。↩