Salesforceで承認ワークフローシステムを構築しているまたはしようと思っている皆様、ワークフロー要件が複雑なためにSalesforceの承認プロセス等の標準機能では構築できず、専用のワークフローツールを使用していませんか?
Spring22のアップデートで、Salesforceの機能を利用して高度な承認ワークフローを構築できるようになりました。
今回は、その新機能である『Flow Orchestrator』と既存機能を組み合わせることでどんなことができるのかを紹介します。
1. なぜ、今までSalesforceで複雑な承認ワークフローを作成できなかったのか?
1-1. ワークフローシステムツールでよくある機能
承認ワークフローを構築する際、以下のような要件を思い浮かべる方が多いと思います。
・申請内容によって承認の流れを分岐する機能
・承認者の複数設定や代理承認者を設定する機能
・承認状況をリアルタイムに確認でき、承認時のコメントを受信する機能
しかし、これらの機能を組み合わせ、複雑な業務要件を満たす承認ワークフローをSalesforceで実現することは困難でした。
1-2. なぜ、今まではSalesforceで複雑な承認ワークフローを実現できなかったのか?
日本は特に、承認ワークフローが複雑だと言われています。例えば、最終承認者に到達するまでの段階の多さが特徴としてあげられます。また、申請金額の大小により、承認の段階の数が変わることもあるでしょう。
もともと、Salesforceには承認プロセスという簡単なワークフローを作成できる機能が用意されています。しかし、承認プロセスでは、承認時はコメント以外入力できなかったり、複雑な承認者の設定ができなかったりと制限がありました。そのため、複雑なワークフローの構築は専用のワークフローツールを使用するしかなかったのです。
2. 『Flow Orchestrator』の概要
『Flow Orchestrator』とは、Spring22で正式リリースされた複雑なワークフローを作成できるSalesforceのローコード開発ツールです。
この新機能とSalesforceの既存機能を組み合わせることで、例えば、以下を実現できます。
・金額等の条件によりフローを分岐できる機能
・Salesforce上からリアルタイムで承認状況を確認できる機能
・承認時の入力項目を自由にカスタマイズできる機能
・ユーザ/グループ単位の割り当て・手動割り当て・代理承認者割り当てができる機能
・申請者/承認者に通知する機能
・複数のユーザが並行して承認する機能
今回、これらの機能を取り込んだ承認ワークフローシステムを実装してみました。
3. 簡単な承認ワークフローシステムを実装してみた
3-1. 承認フロー図
今回は下図のようなフローを想定し作成してみました。
この後のGIFでは、フロー図の赤線の流れをお見せします。
3-2. 実際の承認の流れ
※今回はDeveloper環境のため、ユーザを使い回しています。ユーザの氏名に役職を記載しています。
①申請者は交通費(250,000円)を申請する
②グループ長は長期休暇中のため、グループ長代理が承認する
次承認者(部長)を手動で選択する
③部長が承認する
次承認者(事業部長)は手動で選択する
※ 事業部長・社長に並行して承認依頼されていることが確認できる
④事業部長が承認する
⑤社長が承認する
⑥事業部長・社長が承認を終えたので、経理担当者が決済をする
以上の通り、実装しました。
4. まとめ
Salesforceの機能でも日本の複雑な承認ワークフローシステムを実現できることを理解していただけたでしょうか?
承認ワークフローシステムをSalesforce上で構築するメリットとしては、Salesforce上で全ての情報を参照できることだと考えております。メール通知はもちろん、Chatter通知も可能です。また、レコードの詳細画面にパス(ステータス)を設定することで、承認状況をリアルタイムに表示できます。
今回の記事には書かれていない皆様の会社特有のワークフロー機能も実現できるかもしれません。
ぜひ、Salesforceでワークフローシステムを構築する際は、『Flow Orchestrator』の利用を検討してみてください!
5. 構築の際に参考になるSalesforce公式サイト
* Salesforce Spring'22 リリースノート | オーケストレータ (正式リリース)
* Trailblazer Community のグループ | Orchestrator
* TrailheaDX | Flow and Orchestrator (1)
* TrailheaDX | Flow and Orchestrator (2)
執筆:@kitakado.maho、レビュー:@kumakura.koki.isid (Shodoで執筆されました)