こんにちは、電通総研の金子大地です。
本記事は電通総研 Advent Calendar 2024 の12月11日の記事です!
前編 に引き続き、今回も学生さんに読んでいただくことを想定して、実プロジェクトを進める「現場」で行っているPM育成活動について投稿します。もちろん、電通総研に興味のある社会人の方も大歓迎です。
前編では以下を説明しました。
- 電通総研にはプロジェクトマネージャー(以降、「PM」)を育成する文化があること
- 会社全体での取り組みのほか、開発の現場でPM育成活動が行われていること
- 私自身がその活動をしたこと
今回の後編では、私が資料化して社内共有した「PMノウハウ」 の概要と、PMに求められるスキルを紹介します。
1. 私が社内で共有した「PMノウハウ」の概要
私がどのような「PMノウハウ」を資料化して所属部署(コミュニケーションIT事業部)に共有した、テーマ別の概要を一部紹介します。具体的なノウハウそのものには触れませんが、"どのようなことが書いてあるか" のイメージは沸くでしょうか。
1-1. PMの役割
「1-2」以降の説明の前提となる、一般的な用語や電通総研に特有の情報を資料化しました。
ちなみに、電通総研では「いわゆるPM作業」に留まらず、業務・ITスキルの領域に深く踏み込むPMが多い印象です。私は「業務スペシャリスト → PM」というキャリアを歩んだこともあり、「業務に強いPMスタイル」と言えるかもしれません。プロジェクト規模・体制にはよりますが、PMを担当しつつ、私自身が設計書の作成・レビューも行うことが多々あります。
※ ちなみにここで言う「業務に強い」というのは、下記を意味しています。
- 顧客業務の内容・背景・意図を早期に理解して、プロジェクトメンバーと技術リスク・持っていきたい方向性などを認識合せし、顧客と仕様調整して設計に落とし込むスキルがある
- 上記をふまえたテスト・移行の方針策定、および テスト設計・移行設計ができる
※ 電通総研の社員紹介ページも、ぜひご参照ください。
<コンテンツ概要>
- PMとは ※ 前編をご参照ください
- 電通総研におけるPMに至るキャリア
- 電通総研では入社後からPMに至るまで、どのようなキャリアを歩むことが多いか。
- プロジェクト体制の組み方
- 社内・パートナー会社さんのメンバーを集めて、どのように体制を組むか。
- PMの具体的な作業内容
- PMが担当する成果物・作業のラインナップと、PMと各メンバー(チームリーダー等)との役割分担。
- 例)要件定義工程では、「マスタースケジュール、テスト計画書、移行計画書」をPMが作成する。
1-2. マスタースケジュール・成果物体系
プロジェクト個別の事情を考慮してスケジューリングをします。そして、各工程(要件定義・設計・テスト・移行等)で何を成果物とするかを定め、計画的に作業を進めます。
<コンテンツ概要>
- マスタースケジュールの作成方法
- マスタースケジュールは、プロジェクトの全体スケジュールのこと。
- 大きいレベルでのスケジュール管理をマスタースケジュールで行い、詳細作業(数100~1,000程度がよく見られる)を「WBS(Work Breakdown Structure)」で管理する。
- 作成のためのテクニックはあれど、一番大事なことは「開始から終了まで、このスケジュールで進められそう」という感覚を持てるまで考え抜き、それをスケジュールに反映すること。
- 成果物体系の作成方法
- 成果物体系は、各工程の成果物を洗い出し、成果物間の関係性を示すもの。
- 基本的には、「その工程で何を作成すれば、ステークホルダー間で必要な認識合せができ、後続工程のインプットが完成するか」を考える。
1-3. PM活動の難所
私が難しいと思うPM作業に、「要件定義」・「テスト計画」・「移行計画」があります。若手PMはまずこの3つの壁にぶち当たるので、その壁を乗り越え易くするためのノウハウをまとめました。実務経験が無いと理解しづらい内容なので、ここでは簡易な説明に留めます。
<コンテンツ概要>
- 要件定義の進め方
- 要件定義の「開始前準備・実施中・終盤」それぞれの進め方
- 例えば「終盤」では、”スコープ定義” という大事なプロセスの進め方を紹介
- テスト計画・移行計画の作成方法
- 計画段階で決めるべきことや、決めるための考え方。
- 移行タイムチャートの作成方法
※ 移行とは
プロジェクトで開発・テストしてきたプログラムや準備したデータ等を、システムの本番環境に反映する作業のことです。本番移行が完了すると、開発してきた新規機能をエンドユーザが利用できるようになります。
本番移行は限られた時間内に完了させる必要があるため、あらかじめ各作業の前後関係を明確化したタイムチャートを作成して作業の予定・実績時刻を管理します。また、本番移行前に移行リハーサルをして、作業手順や移行データに不備が無いかチェックし、作業時間を計測することで、本番移行を時間通り正確に進められるようにします。
1-4. その他
工程共通のPM活動である「コミュニケーション管理」・「課題管理」・「ドキュメント管理」や、本稼働後の「保守運用」、PMが関わる「契約・手続」についてもノウハウを整理しました。ここでは説明を割愛します。
2. PMに求められるスキル
2-1. タレント・トライアングル
PMに求められるスキルは、PMI(Project Management Institute)、IPMA(International Project Management Association)、IPA(情報処理推進機構)等のPMに関する団体が定義しています。例えばPMIでは、「プロジェクトマネジメントに携わる人にとっての理想的なスキルセット」として、タレント・トライアングル を提唱しています。
私が行ったPM育成活動は、暗黙知だった「Ways of Working」および「Power Skills」を実践的な形式知にし、それらをメンタリングにより強化する活動、という位置付けでした。
トライアングル要素 | 説明 |
---|---|
Ways of Working | プロジェクト管理手法などのPMに関するテクニカルスキル。 |
Power Skills | リーダーシップなどのヒューマン系のスキル。ソフトスキルと呼ばれることもある。 |
Business Acumen | ビジネス感覚や業務知識。 |
2-2. 私の考える「PMに求められるスキル」
さて、ここからは「イチ現場担当者(私個人)の意見」として捉えてください。電通総研の新卒採用の方針とすり合わせなどはしていません。
以下のとおり、PMに求められるスキルの1つである「Power Skills」について、学生さんに伝わる言葉で表現することにトライしてみました。 大前提として①が必要であり、そのうえで②③④が求められます。さらに⑤を発揮することで、もうイチ段高い②③④が発揮される、と考えています。なお、②③を除き、一般用語ではありませんのでご注意ください。
では、それぞれのスキルがどういうものかを見ていきましょう。
①踏み出す力
自分が分からないこと・未経験のことを「やってみる力」、未知のことに「飛び込む力」、案件・組織等の「壁を越える力」です。明るく前向きであろうとするマインドや、できない理由を探すのではなくどうやったらできるかを考える思考特性が重要です。
入社後はぜひ、所属の「部」という枠組みを超えて知り合いを増やし、話しやすい関係性を築きましょう。それが、“会社には味方がたくさんいる” という気持ちに繋がり、「踏み出す力」への追い風となります。
②言語化能力
事実・自分の考えを、プラス・マイナス無く、ありのまま・誤解なく伝える力です。文章・口頭説明のいずれにも求められます。日常でも「説明が難しいこと」はあると思いますが、諦めずに言語化に取り組んでみてください。また、判断が分かれる話題になった時に、「自分は〇〇がいいと思う。なぜならば△△だから」というように、自分の考えを明確にしてください。それがこの力の強化に繋がります。
③論理的思考能力
前提・事実・考え 等を、分かりやすく組立てて説明する力です。例えば、お客様との限られた会議時間で様々なテーマを扱いますので、急に「〇〇ですか?」と問いかけても、「何の話?」と言われてしまいます。したがって、情報を整理して筋道立てて認識合せする必要があります。
論理的思考能力は、他のスキルよりも書籍・研修が多く存在するため、業務外でも学びやすいと言えるでしょう。
④言葉のキャッチボール能力
相手の理解度を確認しながら話したり、相手の質問を理解して噛み合った返答をしたりする力です。会議前の準備段階で考え抜き、「こう説明したらこういう意見が出てきそうだな」と想定問答を考えておくことで、短時間に有意義なコミュニケーションを取れます。
ちなみに、コロナ禍を経てリモート会議が増え、相手の表情が読み取れなくなったので、「ここまでの説明でご不明点・ご意見などはありますか」といった意識的な問い掛けで理解度を確認する重要性が高まりました。
⑤もう一歩踏み込む力
「答えらしきモノ」を得た安堵・小さな達成感を乗り越えて、あるいは会話に登場した「思考停止ワード」で止まらずに、もうイチ段階 深掘り、具体化して、考え・話し・聞く力です。例えば「お客様に確認して得られた回答に基づき、後続作業(例. 設計作業)を進められるか」を考え、不足があればさらに踏み込んで確認します。
必要なことを突き詰める・深掘りする「粘り強さ」とも言えそうですね。スキルというより、行動特性と呼べるかもしれません。
おわりに
前編・後編を読んでいただき、「PM」という仕事の解像度が少し上がったでしょうか。また、「PM」をやってみたくなりましたか。
誰しも、初めてPMを担当する時は不安がいっぱいです。でも、電通総研には勉強する材料はたくさんありますし、フォローしてくれる先輩もたくさんいます。お客様に説明予定の資料に不備があれば、事前にチェックして改善できるよう寄り添ってくれることでしょう。お客様への説明が言葉足らずならば、あなたの横にいる先輩が「補足ですが、・・」とフォローしてくれることでしょう。
PMという仕事は簡単ではありませんが、だからこそやりがいがあり達成感を得られる仕事だと思います。
私は、方針・計画・仕様等の合意形成の舵取りをしてプロジェクトを推進していくという、「大きなものを動かす感覚」を持てることに、PMとしてのやりがいを感じます。様々な作業における進め方の自由度が高いので、自分の考えを詰め込んだ ”たたき台" で道を切り拓き、関係者と認識を合わせて、慎重にまたは大胆に進めるプロセスは "腕の見せ所" と思って取組んでいます。そして、お客様との協同作業をスムーズに進められた時、課題が解決した時、システムが無事にサービスインした時、メンバーに感謝しながら達成感を噛み締めます。
電通総研でPMをやってみたいと思った方は、ぜひ下記もご参照ください。
執筆:@kaneko.taichi、レビュー:@miyazawa.hibiki
(Shodoで執筆されました)