はじめまして!
バリューチェーン本部の花ヶ崎雄太と申します。

新卒1年目の12月に一般社団法人コンピュータ教育振興協会(ACSP)の主催する3次元CAD利用者技術試験の準1級を受験し、合格いたしました。
今回はそれについて、
・3次元CAD試験とは
・受験の理由と感想
・出題される問題の概要と傾向
・実際の学習方法
・合格のコツ
の5つに分けてご紹介します。
本記事の想定読者
・3次元CAD利用者技術試験に興味がある/取得の予定があるが、CADの操作については未習得な人
・仕事や学業で製造系の業界や学問に携わっており、これからCADを習得予定の人
※なお本記事では「CADそのもの」やそれに関連した個別の用語についての説明は行いませんが、想定読者向けに難しいと考えられる単語には一部注釈をつけています。
1. 3次元CAD試験とは
試験概要
ここは公式から引用します。
『「3次元CAD利用技術者試験」は、3次元CAD を利用するエンジニアや学生が身につけておくべき知識と技能が証明できる、3次元CAD試験制度です。』
『3次元CADシステムを利用した機械系・製造系のモデリング・設計・製図などの業務に従事することを目指す方、もしくは従事して間もない方を想定して試験を行います。3次元CADを学び、知識と操作の基礎的な部分を習得し、設計の補助業務やオペレーターを目指す方が対象です。』
2025年度 3次元CAD利用技術者試験 概要より引用。
つまり3次元CADをこれから積極的に利用していこう、という方に向けての試験ということですね。
ちなみに本試験は製造業でCADを使用する方向けであり、建築業向けではないようです。
2級について ~準1級受験には事前に2級の取得が必要~
準1級を受験するためには事前に2級に合格している必要があります。
具体的には準1級の申し込み期限の前日(準1級試験日の1か月ほど前)までには2級を取得している必要があるので、準1級以上の取得を目指す方はまずは2級を取得しましょう。
2級は比較的難易度の低い選択式の試験で、CBT形式でテストセンターで実施されます。
難易度は高くはありませんので、公式の販売している書籍(https://www.acsp.jp/ACSP_books.html)を学習して過去問演習を重ねれば十分合格可能です。
私の累計の学習時間は15時間ほどです。
2級を学習することで、その後のモデリングでも用いる基本的な用語や手法を知ることができます。
2級にはモデリングの実技はありませんが、できれば2級もCADを触りながら学習したほうが学習効率が高いと思います。
準1級について
準1級は年に2回、例年7月と12月に開催されます。
いつでも受けられる2級とは違い年2回のみの開催ですので、機会を逃さないように注意しましょう。
準1級では実際に会場にPCを持ち込み、モデリングの実技を行います。
詳しくは後述しますが、問題は2次元図面を読み取ってパーツモデル*1を作成する形式です。
そうして作成したモデルの体積、表面積などを測定し、解答群の中から最も近い値をマークシートに記入する形式で試験が行われています。
試験時間は120分と長めです。
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*1 パーツモデル :単一の部品を3DCADで作成したモデルのこと。
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2. 受験の理由と感想
なぜ受験したのか?
率直に言えば、業務上必要だったからです。
私の所属する部署はCADをメインの商材として扱っており、CADの基礎知識/技術を身に着ける必要があります。
そのため業務上の要求として最低限「2級」の資格を取得することとなっていました。
しかしOJTの方からのアドバイスや、より高みを目指したいという思いから、私は準1級に挑戦することにしました。結果的に、私の所属するバリューチェーン本部の新人14人のうち、準1級を取得したのは私含め2人でした。
受験してよかったか?
結論としては、よかったです。そう思う観点は3つあります。
1.CADの基礎知識および基本的なコマンドを習得することができた。
準1級では、要求されるコマンドは基本的なものがほとんどです。試験問題がスムーズに解けるようになる頃には、基本的な形状(例えばテレビリモコンなど)なら難なくモデリングできるくらいのスキルが十分につきます。
2.扱うCADに関する理解が大きく深まった。
学習・受験に利用するのはそれぞれの受験者が利用しているCADですから、そのCADについての設定や効率的な使用方法、得意や苦手などの理解が大きく深まります。
今回私は「NX」というCADを使って学習と受験を行いましたが、学習の過程でNXならではの強みや特異な点を複数感じ、理解することができました。
3.単純に楽しかった。
個人的には重要な観点だと思います。
CADで形状を作るのが、なんだか砂山で城を作っているような感覚で楽しかったです。
またモデリングの時間が早まることや、それまで気づかなかったモデリング方法に気づくことなどで自分の成長をひしひしと感じられます。
今回の学習と受験経験を通して、仕事を行うモチベーションという点で「楽しい」という感覚が重要だと実感できました。
3. 出題される問題の概要と傾向
ここでは準1級における具体的な問題の概要と傾向、主な使用コマンドについて紹介します。
問題の概要
準1級では、
準1級と1級で共通の問題が2問と、準1級のみの問題が1問の、合計3問出題されます。
どの問題にも共通なのが、最終的な問題の解答は「モデルの完成」ではなく、「完成したモデルからのパラメータの測定値」であることです。
具体的には各問題につき3~5問の設問があり、「点Aから点Bの長さを測定し、選択肢から最も近いものを選べ」「立体Cの体積を測定し、選択肢から最も近いものを選べ」といった出題がなされます。
指示や図面に従ってモデリングをし、その最中や完成後にパラメータの測定を行い、マークシートに記入する、までが、基本的な解答の流れです。
(1) 共通問題-1

座標や形状、モデリング方法についての指示があり、指示通りにモデリングを行う形式です。
基本は指示に従えばよいので、練習を繰り返すことでコマンドを理解し、モデリング速度を上げることが重要です。
主な要求コマンド
スケッチ、押し出し(和・差・積)、回転、直方体、円筒、球、エッジブレンド、面取り、シェル、データム平面(無限平面)、トリムボディ、ミラージオメトリ、パターンジオメトリ、線
※コマンドの名称はNX準拠のため、CADによって異なる可能性があります。
(2) 共通問題-2

3面図*2を読み取って、その図面の通りにモデリングを行います。無限平面*3を使った複雑な押し出しが求められることが多く、効率よく解くためには、経験に基づく「閃き」が必要です。個人的には準1級範囲で最も癖が強いと感じています。
また実際の現場で作ることは決して多くない形状だと思いますので、問題に慣れるまで時間がかかります。
主な要求コマンド
スケッチ、押し出し(和・差)、直方体、エッジブレンド、面取り、データム平面(無限平面)、トリムボディ、円錐、点セット
※コマンドの名称はNX準拠のため、CADによって異なる可能性があります。
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*2 3面図 :正面図、側面図、上面図の3種の図面。3次元形状を3方向から投影した2次元図面であり、この3つを見ることで3次元形状の作成が可能。
*3 無限平面 :CADではXYZ平面以外にも任意の平面が作成可能。この平面で立体を切断する手順は超頻出。
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(3) 準1級問題

共通問題-2と同じく、3面図を読み取ってその通りにモデリングを行います。しかしこちらの方が”現実にありそうな”形状が出題されるので、比較的イメージはつきやすいです。
ただ複雑なスケッチやコマンドの使用をせざるを得ない場合もあり、要求されるモデリング力は高いです。
主な要求コマンド
スケッチ、押し出し(和・差)、回転、直方体、円筒、エッジブレンド、面取り、シェル、ドラフト、データム平面(無限平面)、トリムボディ、点セット
※コマンドの名称はNX準拠のため、CADによって異なる可能性があります。
4. 実際の学習方法
コマンドを知る

私はまず、コマンドを知ることから学習を開始しました。
最初はそもそも必要なコマンドがバーのどこにあるのか、似たようなコマンド(例えば、パターンフィーチャとパターンジオメトリ)のうちどれを使えばいいのかなど、全くわかりません。
そこで最初は、準1級の共通問題-1をじっっっくり時間をかけて解き、「どのコマンドがどこにあるのか」「どのコマンドをどの順番で使えば目的の形状を実現できるのか」を学習しましょう。
共通問題-1は問題文の中で使うコマンドや座標を指示してくれているので、「コマンドの所在の把握」や「そのコマンドで何が起こるのか」の学習に向いています。
ちなみに私は最初、共通問題-1を1問解くのに4時間かかりました(笑)。
とにかく演習あるのみ

コマンドについてある程度把握出来たら、あとはとにかく問題を解きまくります。
問題は基本的には過去問です。
公式の書籍には過去問が1年分(前期と後期の2回分)掲載されているので、演習に使用できます。
また試験の公式サイト(https://www.acsp.jp/cad/3d_past_web3d.html)では、過去問において出題された形状のモデリング結果が掲載されています。図面から正解の形状が想像もつかないときや、行き詰まった際に参照するととても役立ちます。
さらに、日経クロステック(https://xtech.nikkei.com/dm/article/COLUMN/20120605/221476/)では当試験の例題が複数掲載されているので、そちらを利用して演習するのもよいでしょう。
問題に取り組む順番は
- 共通問題-1:~15分で解けるようになるまで
- 準1級問題:~60分で解けるようになるまで
- 共通問題-2:40~60分で解けるようになるまで
をおすすめします。

共通問題-2と準1級問題は図面の読み取り力も必要になりますが、共通問題-2では図面で隠された部分(点線部分)に三角形の入れ子構造を作ることが要求されます。しかしコレには非常に癖があり、図面に慣れていない状態でいきなりやるのは難しいです。
そのため、手順が多い代わりに比較的オーソドックスな準1級問題で実力をつけてから取り組むのがおすすめです。
合格までの累計学習時間は?
私の場合は合計70時間ほどです。
業務時間での学習が認められていたため、平均1日2~3時間の学習を約1.5か月継続しました。
ただCAD経験ゼロの状態から開始し、初期はコマンドの学習に丸1日費やすこともありましたから、CAD使用経験が少しでもあるならこの時間は短くなると思います。
5. 合格のコツ
最後に私の経験から役立ったと感じた具体的な合格へのコツを、いくつかかいつまんでご紹介します。
準1級受験用のコマンドバーを作る

CADによって異なるとは思いますが、私の利用するNXではコマンドのバーをカスタムで作成することができたので、試験で使うコマンドを集めてカスタムバーを作成して使っていました。
コレがあるだけでいちいちコマンドを探す手間が省け、また慣れも早かったので解答の高速化が実現しました。
また副次的に「カスタムバーを作成する」という設定面での学習ができたのも良かったと感じました。
同一形状を作るうえでも、複数の実現方法があると知る
単なる円筒を作成するうえでも、
・円をスケッチして押し出し
・長方形をスケッチして回転
・円筒コマンドの利用
など複数の実現方法があります。
これが試験問題ともなると、各形状を実現する方法が非常に多岐にわたります。
その中でどの方法が自分に合っているのか、どの方法が効率がよいか、といった部分は、問題を解くうちに経験的に身についてきます。
例えば上の例であれば基本的には「円筒コマンドの利用」が最速でしょう。
たくさん演習問題を解いて、自分に合ったモデリング方法を学びましょう。
またその方法が実際の業務や研究で使用するものならなお良いですね。
設問の順番通りにモデリングを行う
上の事項に関連して、同一形状を作るうえでも色々な順番で実現することが可能です。
しかし「試験の合格」を意識する場合は、設問の順番通りにモデリングを行うことをおすすめします。
指示がある共通問題-1は当然として、共通問題-2、準1級問題にも効率の良いモデリング順が存在します。これは設問の順番に従えば実現できるようになっています。
例えば
設問(1):点Aと点Bの距離を測定
設問(2):面Cの面積を測定
の場合、面Cを作る過程で、点Aと点Bも完成していることが多いです。
そしてここで先に、
設問(2)の面Cのところまで作った後に設問(1)を解いて間違っていた場合、まず間違いなく設問(2)も間違っているので、面Cのところまで作り直しになってしまいます。
しかし先に設問(1)の点Aと点Bを作成し解答しておけば、間違っていても早く気づくことができる*4のです。
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*4 間違っていても早く気づくことができる :モデリング結果が違うときには「測定結果」が「解答の選択肢」と大幅に異なることが多いため、モデリングのミスには比較的気づきやすいです。
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まとめ
今回は、3次元CAD利用者技術試験の準1級の受験や学習について、新卒1年目の目線で解説しました。
学習コストは大きいですが、準1級に合格する程度の知識/技術があれば、基本的なモデリング能力を身に着けたと十分言っていいくらいのスキルは得られます。
また単に学習するだけでなく、その中で実際の設計に活かせる経験も手に入ったと思います。
今後はさらにモデリング力を高めるために1級の取得を目指します。1級はアセンブリの知識やさらなるモデリングの高速化が求められるため、引き続き経験を積んでスキルアップを志向します。
執筆:@hanagasaki.yuta
レビュー:@yamashita.tsuyoshi
(Shodoで執筆されました)



